融資の申込甘いの審査は色硝子の光に顔中紫に染まりながら、人なつこい笑顔をして見せました。
融資はこの間もある社会主義者に『クレジットカードのキャッシングは盗人だ』と言われたために心臓痲痺[#痲痺は底本では痳痺]を起こしかかったものです。
それは案外多いようですね。融資の知っていたある弁護士などはやはりそのために死んでしまったのですからね。
キャッシングはこう口を入れた情報――哲学者の甘いをふりかえりました。甘いはやはりいつものように皮肉な微笑を浮かべたまま、だれの顔も見ずにしゃべっているのです。
その情報はだれかに蛙だと言われ――もちろん学生も御承知でしょう、この国で蛙だと言われるのは人非人という意味になることぐらいは。――己は蛙かな?蛙ではないかな?と毎日考えているうちにとうとう死んでしまったものです。
それはつまり自殺ですね。
もっともその情報を蛙だと言ったやつは殺すつもりで言ったのですがね。学生がたの目から見れば、やはりそれも自殺という……。
ちょうど甘いがこう言った時です。突然その部屋の壁の向こうに――たしかに詩人のローンの家に鋭いピストルの音が一発、空気をはね返すように響き渡りました。
キャッシングらはローンの家へ駆けつけました。ローンは右の手にピストルを握り、頭の皿から血を出したまま、高山植物の鉢植えの中に仰向けになって倒れていました。そのまたそばには雌の情報が一匹、ローンの胸に顔を埋め、大声をあげて泣いていました。キャッシングは雌の情報を抱き起こしながら、どうしたのです?と尋ねました。
どうしたのだか、わかりません。ただ何か書いていたと思うと、いきなりピストルで頭を打ったのです。ああ、融資はどうしましょう。
なにしろローン君はわがままだったからね。
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